レーシングシーンから生まれたスポーツスターは、レーストラックでもショールームでも熾烈な戦いの連続であり、絶え間のない進化の物語でもある。
「スポーツスター」の原型といえるのが、この『Model K』。レーシングテクノロジーからフィードバックされた4カム、エンジンと一体式のケースに収まったミッション、スイングアーム式フレームといった基本構造を持ち、排気量750ccのサイドバルブエンジンは30馬力を発揮。最高速は158km/hを超えた。
初めて「Sportster」という名を冠したのが、この1957年。54年に883ccへ上げたKモデルの排気量をそのままに、サイドバルブヘッド(SV)をオーバーヘッドバルブ(OHV)に変更し、性能を飛躍的に向上した『SHOVEL HEAD(ショベルヘッド)』エンジンを搭載する。42馬力、最高速164km/hをマークした。
1958年に競技用の『XLCH』と、ツーリング向きの『XLH』の2本立てとなり、軽快な装備でオフロードでの走破性も高い『XLCH』は59年より公道仕様も発売。55馬力、最高速185km/hの性能を誇った。67年にセルスターターを装備する。
フラットトラックレースのために開発されたファクトリーレーサーが『XR750』。1969年のルール改訂により、750ccのOHVエンジンで米国内のレースに参戦できるようになったため、ハーレーダビッドソンは競技に勝てるマシンを必要とした。XR750はそのためのバイクであり、究極のウィニングマシンであり続けた。
CR (Cafe Racer)にはビキニカウルや2in1マフラー、シートカウルが採用されたほか、新しいフレームやダブルディスクブレーキ、アルミキャストホイール、リアセットフットペグが装備された。それまで製造された中でもっともスポーティなスポーツスターであり、全身をブラックアウトした姿は元祖ダークカスタムとも言えよう。
ハーレーダビッドソンのワークスチームが『バトル・オブ・ザ・ツイン』参戦のために市販化したホモロゲーションモデル(※)が1983年の『XR1000』だった。 ハイカムが組み込まれ、新設計の燃焼室を持つエンジンは、デロルト製のキャブレターを右側に2つ備え、車体の左側にはメガホンマフラーが取り付けられている。 ※市販車をベースとした車両が参戦すると規定されたモータースポーツレースにおいて、その競技に参加するために生産・販売されたモデル。
1986年、スポーツスターは883ccと1100cc、2つの排気量を持つオールアルミ製のニューエンジン『Evolution(エボリューション)』を搭載する。883は初代57年モデルと同じボア・ストローク(76.2×96.8mm)で、1100は85.1×96.8mmとし、いずれもミッションはショベル時代同様に4速だった。
スポーツスターは1991年にトランスミッションを4→5速化すると、92年に1200が、93年に883がベルトドライブ駆動となる。そして97年には全車でガソリンタンク容量を8.5→12.5リットルに増やした。
ハンドルをプルバックし、ライディングポジションをコンパクトにした『Hagger(ハガー)』は1988年に登場。1100が1200に拡大され、フロントフォークのインナーチューブ径が35→39mmに変更された年だ。写真は97年式の『XLH883Hagger』。
1998年にバッテリーをMF化し、トラブル検知機能を装備。そして、ハーレーダビッドソン100周年となる2003年には、スターリングシルバーとビビッドブラックのアニバーサリーペイントが、期間限定で全てのスポーツスターに施される。
2004年にラバーマウントフレームへ移行すると、08年にはより運動性能を高めた『XR1200』が登場。エンジンをチューニングし、専用のオイル冷却システムやダウンドラフト吸気、倒立式フロントフォークと軽量アルミスイングアーム、右2本出しマフラーを装備した。オレンジの外装は『XR750』を彷彿とさせるものだった。
Dark Customがスポーツスターの風貌を一変させた。『Nightster』にはブラックのリムが装着され、ひそかにストーングレーのエンジン仕上げが施された。さらに現代のライダーにはお馴染みのLEDストップ/テールライトが、テールエンドに組み込まれている。
モノクロームペイント、ブラックアウトされたエンジン仕上げ、ボブスタイルのリアフェンダー、『Nightster』のライティングデザインを受け継いだ『Iron 883』が登場すると、瞬く間にヒットモデルに。現在ではスポーツスターに欠かせぬ存在となっている。
ブラックの16インチリムとカットダウンミニマリズムにより、『Forty-Eight』は登場して間もなくその地位を確立し、カスタムの手本となった。1948年式『Model 5』で最初に導入されたピーナツタンクがこのモデルでは復活しており、それに由来したネーミングとなっている。写真は2015年式。
70年代のあらゆるクールさを再現してデザインされた『Seventy-Two』は、21インチのフロントホイール、エイプハンガーバーと魅力に満ちたHard Kandy Customメタルフレーク塗装仕上げで引き立てられたピーナツタンクを装備し、チョッパースタイルへの大いなるリスペクトが込められている。写真は2012年式。
2015年に大変身を遂げた『Iron 883』は、強化されたサスペンションとホイール、改良されたライディングポジション、ロールドレザーシートとマッチするアグレッシブでディープなDark Customをその身にまとっている。
反逆児を地で行くスタイルを貫く、2017年型『Forty-Eight』。極太なフロントフォークに相応しい、高品質のリアショックと軽量のマグホイールが特徴的。70年代にインスパイアされた新解釈のアート作品のようなピーナツタンクは、このモデルのシンボルだ。
スリルに満ちたスポーツスターの60年の歴史を継承し、性能が一段とアップした『Roadster』は、倒立式フロントフォーク、プレミアムショック、パワフルなフロントブレーキを備えたシャーシによって、バランスの取れたライディングポジションをライダーに提供する。